霜明洞のカウンター席にて記す。
普通のブログ。
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覚悟なんて。
幼い頃は、青い目をしていた。
空の青とも海の青とも違う、硝子玉のような透明な青。 成長するにつれて、目は黄色く変化していき、緑にも見える不思議な金色になった。 目付きは悪いけれど、とても美しい目をした猫になった。 その目をカメラで写したかったのだけれど、今朝、瞬膜が目の半分を覆っていた。 半分になってしまった、月よりも美しい金色の目。 友達の家に行って、段ボールに入れられた何匹かの中から、この子を選んだ。 他の兄弟姉妹は保健所へ送られた。 私は一人っ子だから、兄弟姉妹がいる気持ちを知らないのだけれど、この子は家族を覚えているのだろうか。 母親から引き離されたその晩、ずっと鳴いていたのを覚えているのだろうか。 私達の事を、近しい存在だと感じてくれているのだろうか。 その後すぐに、持病が発覚した。 日本で初の症例、特効薬もない病気。 それでも最後まで面倒を見る、この子は私達の家族だと、そう自然に思った。 すぐに薬はいらなくなって、食べて太ってだらけて夜遊びして媚びて甘えて拗ねて遊んで、そんな日々がずっと続いて、そして忘れかけていた『最後』が近付いてきた。 猫は自分の死期が来ると、家を出てどこかへ行き、一人で死ぬという。 今まで飼ってきた猫達は皆そうだったし、この子もそうだろうと思っていたけど、この子は突然いなくなってから数日後、フラフラになりながら帰ってきた。 どこまでも甘えん坊なんだから。 でも、死を看取るというのは、見取れるというのは、看取れない事よりも、幸福な事なのだろうか。 死は猫のように、足音を立てずにやってくる。 だけど気配はするのだ。 この子の上に覆い被さる、日増しに濃くなっていく死の影が見える。 痩せ細って骨の浮いた体。 私が生まれた時には、もう猫がいた。 失踪する度に新しく貰ってきて、私の生活に猫が関わっていない方が不自然な気がした。 だけど今まで、猫の死を直接感じた事はない。 こんなにも恐ろしいものなのか。 緑を宿した金色の目。 美しい視線。 しなやかな体と柔らかい毛並み。 安らかな光を含んだ温かい命。 この子を愛している。 無条件に愛おしい。 私はどれだけ愛してあげられただろうか。 この愛を伝えられていただろうか。 どんなものをその目に映したきたの? 私達の腕は温かかった? 外で遊ぶのは面白かった? 楽しい夢を見た? あなたは幸せだった? 生きていて良かった? 世界は美しかった? 愛してる。 PR
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